貴方は、其処に居た。

    確かに其処に居たね。


    この眼には、残酷な程鮮やかに映って居た。





    けれど今其れを見る事は無い。

    特別な意味も無く。

    特別な感情も無く。


    ただ、其の事実に堪えるしか無い様だ。




    そっと忍び寄る愚かな影は

    又、この精神を支配しようと蠢く。


    嘲えた筈の其れにも・・・

    今はもう何も出来ない自分が居る。



    貴方は確かに其処から見て居たね。

    残酷な迄に愚かで醜い僕を・・・




    何故、あの時告げてくれなかったのだろう

    今でも其れだけが奥底に残った侭で・・・


    けれど、貴方に其れを問うコトさえ

    もう出来ない。



    不可などという次元の言葉では表せない

    出来ない・・・答えは其れだけ




    僕は貴方を選んだんだ。

    貴方は僕を選んでは居ない。


    きっと只、人という塊を信じられずに

    其れでも其処に居るコトを望んだんだろうね。




    貴方は、確かに・・・・

    確かに其処に居た・・・

    居た筈なんだ・・・けれど。



    見えなくなってしまった

    此の視界は薄れてなど居ないのに・・・




    どうして・・・

    何故あの時、告げてくれなかったのだろう



    貴方は、僕を選んで居た。

   

    人という塊を否定しながらも微かな希望を抱いて。


    其の言葉が・・・

    否、此の言葉が・・・


    届いてさえ、居たなら。



    貴方は僕に何を抱いて居たの?

    僕は貴方に何を抱いて居たのだろう?


    今となってはもう、思い出せない程の

    複雑に入り組んだ・・・・

    単純な感情を其処に込めて居た気がする。




    貴方は、僕を選んで居た。



    遺した十字架が

    其れを証明いて居たんだ。



    どうして告げてくれなかった?


    もう、幾ら呟いても意味等無いね

    でも大丈夫・・・


    貴方は僕を選んで居た

    人を信じられず震えながらも、僕を



    だから僕もこれからもう一度

    貴方を選ぶ為に視界の世界を変えるよ





    十字架が証明して居た。


    ― Suicide ―

    刻まれて居た其れはメッセージ

    

    貴方が僕を選んだ証。







    白く輝くロープがこんなにも綺麗で

    貴方が此処に舞い降りたかのようで

    僕は一瞬、眩暈を感じて微笑んだ。





    もうすぐ・・・

    貴方からはっきりと聞けるんだ。


    僕を選んで居たと。



    十字架をナイフの様に削って

    そっと貴方と同じ傷跡を創ってみた。





    此れで直ぐに、僕という証に成るだろう。

    紅が滲んだ十字架をそっと首から掛け・・・





    人を信じるコトを拒んだ貴方。

    貴方は僕を選んで居た。


    僕は貴方を選んで居た。

    其れは、もうずっと前から・・・。



    貴方は僕を選んでた。

    選んで居た。



    存在する意味の無い人の塊以下として

    だから僕も貴方を見て居た・・・

    存在しようとしない・・・透き通る魂として。
    



    僕は貴方と共に在る。

    理由など、思いも寄らない程

    複雑で簡潔的な鮮やかな色。




    白いロープにそっと口付けて・・・

    僕は貴方の元へ視界の世界を歪ませる。



    此の世界は余りに冷た過ぎたから

    意味の無い存在は、ゆっくりとそっと

    其の世界へと消えて逝こう。


    ― Suicide with you ―


    用意していたもう一つの十字架に

    そう・・・小さく遺した。

 

    

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

この日記について

日記内を検索